[Report] T3 Workshop:Media Landscape Without Apple 2019(2019年6月−7月)

(日本語は後ろにあります)

“If Apple Computer went bankrupt in 2007 and iPhones don’t exist, what would our media landscape look like today? Please discuss this among your group and come up with a possible scenario.”

T3 Media Landscape Workshop Video (5min Version)

This was the mission presented to the participants on the first day of a 5-day workshop titled “Media Landscape Without Apple 2019” that we organized and practiced in June and July 2019. This workshop is a Type 3(T3) model among our media infra literacy workshops whose aim is for the participants to “imagine an alternative media infrastructure environment” (see “Theoretical background” for details of the categorization.)

Outline of the workshop

We divided the 13 participants into 3 teams: “Government/Public Sector”, “Lifestyle/Culture”, and “Business and Private Sector.” Each team had to discuss and come up with a possible scenario of a world without iPhones, especially focusing on the aspects allocated to their teams and present it with a 5 to 10-minute slide show with narration. We also urged them to work collectively and put their ideas together as a team.

The participants were snowball sampled, and we also deliberately tried to include people from different fields so that each participant will be able to contribute their knowledge and skills within their groups. In the end, they comprised largely of graduate students from the field of information science and technology, media studies, and those in their 20s, but people with education in arts and designing, as well as those working in the field of advertising and public sector were also involved.

We used a Saturday for pre-workshop seminar, and two weekends during July for the actual group work. The two weeks in between the group works were set on purpose, as we wanted to give some time for the participants to continue thinking about the world without Apple while the workshop was on recess.

For the pre-workshop seminar on June 30, three speakers gave talks on topics related to the current media landscape and gave the participants some things to think about before they began the group work. Professor Yutaka Iida of Ritsumeikan University talked about the history of mobile phones from various perspectives. He touched on the importance of critically looking back at the development of mobile phones not only from technological developments but also from social and cultural aspects. The second speaker, Professor Naoya Sekiya of the University of Tokyo and an expert on disaster and information related issues, talked about the limits of social media and smart phones. He gave examples on how useless social media is when it comes to disasters, which is contrary to many people’s beliefs. The third speaker, Atsushi Udagawa, who is one of our project members and has experience working for an e-commerce company Rakuten Inc., explained how iPhone, or Apple Computer’s design regulations have affected the design of Rakuten’s website over the years. Their interesting and stimulating talks provided various perspectives on approaching our current media landscape.

During the group work phase between Day 2 to 5, participants were basically left to themselves. Their goal was the final presentation on the afternoon on Day 5, but to exchange ideas and to keep track of the progress, mid-term presentation was held every afternoon during Day 2 to 4. Each day lasted about six hours, but observations by the staff showed that participants were constantly engaged in their discussions, including their lunch break.

Provisional summary

In order to understand the effect of the workshop experience, various data were collected from participants before, during and after the workshop activities. An online questionnaire was sent before and after the workshop with a set of questions related to their media usage and their views on them. Interviews were also held about six weeks after the workshop, where we asked the participants to reflect on the workshop and asked if the experience has influenced them in any way.

The data is being analyzed, but our provisional summary shows that the workshop met its aim and allowed participants to think thoroughly and critically about our current media landscape and to defamiliarize themselves with the smartphones and media infrastructure they take for granted.

〔Japanese version of the report〕

「2007年にもしiPhoneが発売されず、Appleがこの地球から突然なくなっていたとしたら、2019年のメディア環境はどのようになっていたでしょうか?
グループで話し合い、スライドを使ってそのシナリオを作り、発表してください。」

この素っ頓狂でSF的ともいえるお題が、2019年6月から7月にかけてインフラリテラシー・プロジェクトが企画、実施したワークショップ(以下WS)のテーマだった。

「Media Landscape Without Apple 2019」と題されたこのWSは、4類型モデルのType3として、「オルタナティブなメディア・インフラのあり方を想像できる」ことを目的に企画デザインされたものである。

1)WS 「Media Landscape Without Apple 2019」の概要

  • スケジュール:土日を5 日間確保

このWSは合計5 日間をかける大掛かりなプログラムである。
WS のキックオフでは目的と実施概要の説明、レクチャー、参加者の顔合わせを土曜日の午後13 時から17 時まで半日をかけて行なった(Day 1)。次にグループワークの1 回目を土日2 日間、10 時30 分から17 時まで実施した(Day 2、3)。そして2 週間のインターバルをあけて2 回目のグループワークを、再び土日2 日間、10 時30 分から17時まで行なった(Day 4、5)。

ワークショップスケジュール
  • プログラム:レクチャー(Day 1)

参加者に共通の知見と議論の手がかりを与えるために専門家によるレクチャーを行った。

・飯田豊氏(立命館大学))「モバイル・メディアの歴史」
モバイル・ メディア機器の発展史、コミュニケーションの変化に着目した社会史、そして、技術の進化と日常社会の関係を技術史の視座から説明した。

・関谷直也氏(東京大学)「災害とスマートフォン」
2017 年九州北部豪雨における被災者のTwitterの拡散と救助の実態の事例紹介。災害時のスマートフォンやソーシャル・メディアの活用の問題点を投げかけた。

・宇田川敦史氏(プロジェクトメンバー)「スマホ最適化の 10年」
スマートフォンのユーザーインターフェイスの変化を Apple の世界観が主導し、 Google に対応するウェブ構造がユーザーエクスペリエンスの理想形となるなど、プラットフォームの生態系が及ぼすメデイア体験への影響を説明した。

  • プログラム:グループワーク(Day 2.3.4.5)                                                                       

    WSのグループワークはDay 2 のオリエンテーションと連絡事項を除いて、各チームでシナリオ制作を進める自主性を尊重したプログラムである。グループワークのバラつきやシナリオの重なり、アイデアの行き詰まりを防ぐために、午後に進捗状況の共有と質疑の時間を設け、各チームが5 − 10 分程度の発表を行ない、全員参加の質疑によってアイデアをまさに発酵させていった。このように毎回6 時間近く行なわれたグループワークでは、一度始まると議論は途切れることなく、まるで尽きることのない湧き水のように、昼食時も常に誰かしらの発話が続くものとなった。

グループワーク議論の様子(産業・ビジネスチーム)
  • グループワーク例(産業・ビジネスチーム)

    産業・ビジネスチームが行なった議論の推移をまとめてみたところ、前半2 日間は、スマート(AI・人工知能など技術開発)とフォン(デバイス)の進化をそれぞれコミュニケーションのあり方を含めて議論している。そして様々なアイデアの取捨選択を繰り返し、「スマート家電」と「パートナーロボット」をキーワードとして、技術とデバイスの考え方を煮詰めていった。後半2 日間では、オルタネティブなメディア環境のリアリティ(人類をアシストするスマートエージェント・家電から出発したプラットフォーム企業BANANA 社)を、WSの参加者からのアドバイスも取り入れながらシナリオに落とし込む作業を行なった。

議論の推移(産業・ビジネスチーム)
    • 参加者の多様性

    社会科学における社会の一般的な区分に従い「行政・公共」「生活・文化」「産業・ビジネス」の3 チームとした。参加者は老若男女、文系・理系、学生・社会人が4-5 名で混在することにより、議論の偏りを避けグループワークが活性化するようにした。

  • 最終発表:オルタナティブなメディア環境のシナリオ

・行政・公共チーム「Suicaの可能性にかけていた」 

スマートフォンは存在しないが、PCや既にあったサービスの「アカウント」に着目してシナリオを作成。2001年に導入されたSuica が、エンターテインメントコンテンツとの接触も媒介するようなオルタナティブな発展を描き、2019年にはSuicaのアカウントに蓄積され た接触履歴、購買・決済情報、位置情報などをクラウド環境で管理する巨大プラットフォームとなっている。

・生活・文化チーム「避難所情報共有プラット フォーム HINANJO」 

スマートフォンが存在しないためにSNSの発達も未熟な世界では、PCや大型電子掲示板(ディスプレイ)がコミュニケーションの中心となる。2014年首都圏直下型地震が発生という想定の下、避難所にあるPCや大型ディスプ レイをつなぐソフトウェア「HINANJO」が活用され、地域住民の生活を支えるプラットフォームとなり、新たなコミュニティ形成につながっていく。

・産業・ビジネスチーム「すべての人にスマー トエージェントを:BANANA社」 

Appleがなくなりスマートフォンが存在しない世界では、家電の音声認識技術を発展させ「スマート・エージェントOS」を開発した BANANA社が、業界他社や異業種を巻き込んだプラットフォーム企業となり、Google、 Amazonと並び「GAB」と称される存在となった。ここでは、個人情報の保護派と開示派の争いが社会問題となっている。

2)WS 「Media Landscape Without Apple 2019」の成果

「メディア・インフラに対するリテラシーの醸成に作用」          参加者に行った事前・事後アンケートから、WSに参加した結果「スマートフォンに対する意識」と「プラットフォームに関する知識」に変化が見られた。

・スマートフォンに対する考え方

スマートフォンがないと「生活に支障が出る」が減少し、「生活が不可能だ」「あまり支障 がない」が増加するなど、参加者のスマートフォンに対する認識に変化が見受けられた。

・プラットフォームに関する知識

プラットフォームについて「よく知っている」が 16.7% から33.3%に増加し、「聞いたことがない」は 0% となるなど、WS参加者のプラットフォームに対する認識を向上されたと考えられる。

 

・事後インタビュー「オルタナティブなメディア・インフラのあり方を想像する」

「このWSはよく考えたら、企業の人たちが会社にとっていいようなメディアの環境を作ってこういう状況になったのかなあって、このWSを経てぼんやりと考えていたんですけど。そう思うと、このWSで問われていたことって、一番下にいる普通の人が一から自分たちにとってどういうメディア環境がいいのか、なんかこう、 自分たちで考えるって結構、全く違ったメディ ア環境になるはずなんだよなって、いうのを感じて。今の状況は企業が作り上げた環境で、本当に下の、こういう私たちだったらどういうのを求めるのかって、それを一から考えようと思うと、改めてメディアのどういう機能を私たちが求めているのかを、もう一回考え直すってい うことだったのかなって、あまりうまく言えないですけど・・。今もうWS終わってしまいましたけど、どういうものをメディアに求めたいのかなあっていうのをちゃんと振り返ってみたいなあっていう気がします。」(社会人・女性20 代)

参加者は5日間にわたるグループワークを通じて、WSに参加する前には所与のものであったメディア環境(=スマートフォンの利用)を異化することにより、メデイア・インフラの存在と影響を改めて認識した。本WSはT3の目的である「オルタナティブなメディア環境を想像する」ための環境を提供できたといえるだろう。

(勝野正博)